ジェネシアはこれまでに50台以上の宇宙望遠鏡を開発しており、あわせて20以上の衛星や惑星探査機に搭載されています。その一部は役目を終えて運用を停止していますが、多くは地球軌道上を今日も周回して観測データを創出し続けています。ここでは、それらの一部を紹介します。
地球観測衛星「ほどよし1号」搭載カメラ
口径107mm, 焦点距離750mm。
屈折型でありながら、同一像面において可視波長域全域で回折限界性能を達成した超色消し光学系。
瞬時視野(地表のフットプリントの設計値)は軌道高度 550km換算でφ16km。
概50cm立方サイズの衛星(概50kg)に搭載して、光学分解能が 5mよりも良好な自動運用に適した宇宙望遠鏡を開発・実証しようとしたもの。
打ち上げ振動耐性や、軌道上の宇宙放射線耐性を考慮することはもちろんのこと、色収差を事実上ゼロとみなせ、かつ軌道上の環境変動によらずピント位置を変動させない技術(アサーマル・アポクロマティック)の開発が必要でした。
環境温度変動によるレンズ形状の変形、屈折率の変化、鏡筒の膨張や収縮の影響を連成させることで、常に光検出器上にピントを合わせ続けることのできる、“アサーマル型” の特性を有しています。
そのため軌道上で、望遠鏡の合焦調整をする必要がありません。
この特徴は、衛星観測システムの自動運用の実現に、大きく貢献するものとなりました。
超低高度衛星「つばめ」搭載 SHIROP
出典:JAXA
JAXAの超低高度衛星技術試験機「つばめ」に搭載。
光学、構造、熱、検出器の電子制御および衛星の姿勢制御技術を連成させることで、小型望遠鏡であっても、超低軌道(軌道高度300km程度)より地上分解能100cm - 40cmで地球観測が可能であることを実証。
たとえ望遠鏡が小さくとも、衛星の軌道高度が低ければ、地表の微細な構造を観測できると期待できます。
一方で、軌道高度が低い場合には、衛星の軌道上の運動速度が速いことと相まって、像ブレが生じやすく、せっかくの高精細性が損なわれます。また、超低高度(300km程度)を飛行する望遠鏡には、通常の望遠鏡に求められる物理的な工夫の他、高層大気環境における活性酸素原子に対する化学的に特別な工夫が求められます。これらについて配慮した望遠鏡の開発が必要でした。
小惑星探査機「はやぶさ2」搭載 NIRS3
小惑星“りゅうぐう”の含水鉱物、炭素化合物の分布を計測
出典:JAXA
特異小惑星 “リュウグウ” を周回しながら、その表面の鉱物組成を分析するために開発された「近赤外分光カメラ」。ジェネシアはその光学系を担当しました。
含水鉱物の表面分布の特定に貢献。
小惑星のサンプル回収地点(着陸地点)の決定に根拠を提供できました。
地球人類の起源はどこにあるのか。
このことについて、太陽系外から持ち込まれた炭素化合物や、含水鉱物との関係が議論されています。
地球の公転軌道付近まで近接する特異な小惑星からサンプルを回収する探査計画「はやぶさ2 プロジェクト」において、探査機がタッチダウンすべき場所を特定するプロセスは、計画遂行のための重要事案でした。
JAXA/国立天文台によるHINODE (SOLAR-B)用 望遠鏡コリメータ
出典:国立天文台
口径50cmの日本製の太陽望遠鏡と、後段の米国製分光観測システムとを結合するコリメータレンズ。
望遠鏡と分光システムをこのコリメータでインターフェースすることで、両者の結合度を低減することができ、安定した宇宙観測系を構築できています。
太陽表面の温度が 6000℃でありながら、その上層大気の温度が100万℃を超える理由は、太陽物理学の長年の謎とされてきました。それを解き明かすために開発された太陽望遠鏡の性能が最大限に発揮されるためには、コリメータレンズによる宇宙観測システムの統合が不可欠でした。
波長450nm - 900nm までの広い波長帯域にわたり、6色波長色消しを実現した超色消し光学系。
温度収差(アサーマル)特性は、単位焦点距離に対して 1e-6乗オーダー/K と僅少。
超小型地球観測衛星「RISING-2」搭載 HPT
出典:北海道大学
口径100mmの反射型の宇宙望遠鏡。
焦点面は、3つの光路に分岐しています。そのうちのひとつの光路には、機械的な駆動部がなく、電子的な制御により透過波長をチューニングできる分光フィルタ(LCTF:Liquid Crystal Tunable Filter)が搭載されています。
50kg級衛星に適合し、高い空間分解能と波長分解能を両立するスナップショットセンサは、衛星に対する姿勢安定要求の緩和にも有利に働きます。
農学、海洋科学、その他の分野における科学的成果をコンパクトかつ効率的に実現するシステムの開発が求められました。
地上分解能 5m で多波長イメージングに成功しました。
狭帯域バンド数が 400を超える分光イメージセンサは、他に類を見ません。
Micro Dragon / TPI
電磁波としての光の特性は、振幅・波長・位相によって表現されます。
これらを同時に計測することを目指した、超小型衛星搭載用の観測システムです。
観測の対象となる地球表面には大別して、陸域、海域があり、それぞれ太陽光に対する反射率、その波長依存性が、反射光の偏光成分に対応して見いだされます。このことについて精緻に観測することで、観測対象物の性状を細やかに特定できるようになります。本機は、このことの実証をするために開発されました。
特性の揃った分光カメラを、検知偏光方位を120°対称をなるように3台配置。
これを一組として同時撮像できるように構成した分光偏光望遠鏡です。
超小型衛星用スタートラッカー(STT)
シリーズ
姿勢決定精度の評価結果
スタートラッカー (STT : Star Tracking Telescope)は、恒星配置を撮像することによりSTTそれ自体が天球上のどの方向を向いているかを精密に検出する特殊な宇宙望遠鏡。STTは衛星構体に厳格に固定されているので結果としてその方位は、衛星本体の天球座標空間における姿勢を示す基本情報として扱えます。ほとんどの宇宙望遠鏡はミッション用だが、STTは衛星バスシステムの一部をなす航法装置です。
このSTTは、リモートセンシングや天文観測など、高い指向精度・姿勢安定性が求められるCubeSatから約200kgクラスまでの衛星向けに開発されました。初号機は東京科学大学(当時は東京工業大学)の「ひばり衛星」に搭載され、このSTTは、2021年から現在(2025年)まで当初の機能を保って正常に動作しています。
宇宙望遠鏡に採用される光センサは、軌道上における放射線損傷によって常に期間劣化が生じます。本STTは、その程度や劣化回復のための基礎情報を豊富にもたらしました。